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乳歯も油断は禁物

2018/01/15

最近は、ひどい虫歯の子供を見かけることは少なくなりました。
しかし、子供をお持ちのお母さま方の中には、乳歯は永久歯にはえ代わってしまうのだから虫歯になってもかまわないと油断している方が依然としているようです。
今回は,子供の乳歯の大切さについてお話ししようと思います。

乳歯はいろいろな役割をしています。最も大きな役割は,
①しっかりと噛める
②正しく発音できる
③きれいな永久歯の歯並びをつくることです。

それぞれについて考えてみましょう。

1.『良く噛めることは良い発育につながる』
生後89ヶ月頃から下の前歯がはえてきます。6歳頃から永久歯がはえ始めますが,一番奥の乳歯が抜けるのは12歳前後です。実に10年もの間、乳歯は子供の口の中に存在し大切な役割を果たします。
食物を良く噛むことで,食物の消化吸収がよくなります。子供の成長発育にはたくさんのさまざまな栄養が必要ですが,そのためには良く噛むことが大切です。また、よく噛むことの刺激は、顎(アゴ)や脳、体の成長発育に大きな影響を与えます。健康な歯でしっかりと噛むことで、歯や顎の骨は正しい発育をたどるだけでなく、唇・頬・舌などの協調した動きも覚えていきます。
子供たちの成長や発育にとってこの10年間はとても大切なのです。

2.『正しい発音は良い歯が育てる』
永久歯がはえ始める56歳までに、1500から2100語くらいの単語を流暢に発音するようになると言われています。
舌が引っかかるような大きな虫歯の穴があったり、乳歯の抜けた隙間があったりすると、舌や唇がおかしな動きをしてしまい上手に発音ができなくなります。
たとえば前歯が一本なくなったら,「さしすせそ」を正しく発音することが大変むずかしくなります。
歯が抜けて息の漏れるところをふさぐために舌が前に突き出るようになり,癖のある発音になるだけでなく,しゃべり方にも癖がつくようになってしまいます。そして,このような状況が長く続くと,たとえ永久歯にはえかわっても、一度憶えた舌や唇のおかしな動きかたは変わらず,大きくなっても息が漏れるような不明瞭な発音が続くことになってしまいます。

3.『永久歯を正しく導く』
乳歯は、お母さんのおなかの中にいるとき(妊娠7週目頃)から顎の骨の中でつくり始められます。そして、生まれたころにはまだ乳歯ははえていませんが,顎の骨の中ではすでに将来はえてくる永久歯の芽ができはじめます。
それから,骨の中で毎日永久歯は成長し,また顎の骨そのものも永久歯がはえてくるために成長します。永久歯ができてくると、乳歯の根は徐々に溶けて短くなっていき、それぞれの永久歯を正しい場所に導いていきます(図1)。

(図1) 3-4歳頃の顎骨では乳歯の下でたくさんの永久歯が形成されつつあります

虫歯などで本来の時期より早く抜けてしまったり、歯と歯の間が虫歯になり隙間があいてしまったりすると、奥に有る歯が前の方によってきて、下からはえて来る永久歯のスペースがなくなってしまいます(図2)。
そして、永久歯が正しくはえる場所がなくなってしまうので,デコボコの歯並びになってしまいます。つまり、乳歯は永久歯がはえてくるまで、ひたすらそのスペースを守ってくれる大切な役割をしているのです。
また、乳歯の虫歯がひどく神経をとるような治療が必要になってしまうと,乳歯の根は永久歯ができてきても溶けず,永久歯がはえるのを邪魔してしまうことがあります。
居すわっている乳歯の根を避けるように、永久歯が脇のほうにはえてしまったり、あるいは骨の中に埋まってしまったりすることになります(図3)。

(図2) 乳歯の奥歯が早期に脱落したために6歳臼歯が前方に移動してしまいました。この部位に生えてくる永久歯のスペースが不足しています。

(図3) 乳歯の前歯がひどいむし歯になってしまったために、永久歯の萌出が傷害され、水平方向に鼻の穴の下に向かって埋まっていました。歯肉に穴を開け、埋まった永久歯に矯正装置を取り付けて牽引しています。

一方,乳歯の虫歯が進行し神経にまで達すると、バイ菌は乳歯の根の外へ進んでいきます。そこには、できかけの永久歯があります。
バイ菌による炎症が起こると、永久歯の形が変になったり、もろくなったりしてしまい,はえ出した時からすでに虫歯のような永久歯になってしまうことがあります。
このように、乳歯は健康な永久歯とその歯並びを守る大切な役割をしているのです。

子供たちが乳歯を使うのは約10年間くらいです。この10年間の間に乳歯は、子供たちにとってとても大切な役割を果たしています。それは、よく噛めることや正しく発音できることだけでなく、将来はえてくる永久歯やその歯並びにまで及びます。
子供たちの一生にとって乳歯はとても大切なのです。
乳歯のはえている時期は、健康の基本的な習慣を身につける大切な時期です。良い習慣をこの時期に上手に身につけることが、結果的には永久歯のむし歯の予防を含め、一生の健康にもつながるのです。かわいい子供たちのために、お母さま方をはじめ家族みんなで、子供たちのお口の健康についてもう一度考えてみてください。